来 歴


今はただ


あれも違う
これもわたしのことばではない
いちめんの花吹雪のようににぎやかで
夏の太陽のように強烈で
凍る海のように厳しく
てのひらそっくりのあたたかなもの
みじんのずれもなく
心と重なり合えることばが欲しい
もう秋だというのに
いがらっぽいことばにむせてばかりいる
見失ったあとであっと気がついて
つかまえたことばをもう一度捨てにいく

標的は遠すぎ
めがねの視点はぼやけたまま
銃声だけが空に死ぬ
それでもことばを求めて
青い旗をふり続ける
腕の痛みはあの日から続いている
またいつもの鳥がやってきて
わたしのことばを呼びたてる
あわてて飛び上がっても
空の高みへはとどかず
たくさんの失望を重荷にして
大地に叩きつけられてしまう
どんなことばの支えもなしに
ことばのたそがれに追いつめられている
今はただ
土のにおいに顔をうずめて
植物のことばが熟れて行くまでの
はるかな道のりにつきあうことだけだ

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